長男の不登校⑤

~東京の父親へ会いに行く~

学校の担任、教育委員会不登校支援チーム、心療内科。

あらゆる先生に相談はした。

結果、私が得たものは不確かなものばかりだった。


ふと。

東京にいる「長男の父親に会いに行こう!」と思いたった。


私は未婚で長男を出産した。

だから、長男は東京にいる父親に一度もあったことがない。

「顔がよく似ている」とだけ伝え、写真もみたことがなかった。


4月のとある日。

池袋で待ち合わせをした。

白髪まじりで髪の毛ボサボサのまま父親は現れた。

初対面のわが子に会うのにそのヘアースタイル…突込みどころ満載だった。

喫茶店で話をしてから、長男の希望で電機屋さんへ行った。

ふたりはゲームコーナーで長い間楽しそうに話をしていた。

笑顔の長男を久しぶりに見たな~と遠くから眺めていた。


父親の住んでいるマンションへ行ってみたいと長男が言った。

途中のスーパーで食材を買い込んだ。

長男と父親がキッチンで料理を始めた。

「キャベツは焼くと縮むから少し大きめにカットして」

父親に言われたとおり、カットする長男。

肉と野菜は特別な調味料を使わず、塩コショウ醤油くらいだった。

それでも、すごく美味しく感じた。

「飯も食えよ、いっぱい食え~」と父親に言われ、長男はもりもり食べていた。


帰りの高速バスの中で、長男は笑顔だった。

「あ~楽しかった。東京はいいところだね。お父さんともたくさん話せて本当に楽しかった」と。

それから。

「お母さん。俺、学校に行くのが嫌とか、学校が嫌いとかそういうわけではないんだ。別に学校に行ってもいいんだけど…」

「けど?」

「学校に行く時間、学校にいる時間が、俺には無駄に感じる。学校に行くならゲームがしたいし、学校に行って何になるの?」と。

長男も不登校になった理由がわからない。
私にも不登校になった理由がわからない。

それが普通、それが当たり前。

だって、理由がわかるなら不登校はなくなるから。

東京で父親と会ってから、長男が少し元気になった。



こんぺいとう

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